山の奥の奥の
小さな畑
 
やどかりは
なぜここにいるのか
わからない
 
自分は海にいるはずなんだ
 
農婦が鍬(くわ)をつかって
畑を耕している
 
しゃしゃ しゃかしゃか しゃしゃ
しゃしゃ しゃかしゃか しゃしゃ
 
ここちよいリズムを
きざんでいる
 
畑のわきの干し草の上で
茶色の犬が
昼寝をしてる
 
木立のうえから
カッコウの鳴き声がきこえる
 
やどかりは今まで
ずっと波の音を
ききながらくらしてきた
 
はじめて耳にする音に
とまどっていた
 
やがて日がくれて
農婦は大きな声で
ジョンジョンとさけんだ
 
犬の名前はジョンらしい
 
そして
農婦とジョンは
なかよく畑から帰っていった
 
やどかりは静まりかえった畑で
ひとりになった
 
やどかりはわけもわからず
だれかに
ここにつれてこられたのだろう
 
やどかりはとても
不安だった
 
おおきくなったら
必要な
新しい巻貝の空殻は
ここにあるのだろうか?
 
すっかり暗くなった
 
やどかりは
今夜 
寝つけるのだろうか?