男は、路上に、
本を、ならべた。
 
だれも、見向きも、
しなかった。
 
思い入れで書いた、
本らしいが、
都会では、
いそがしすぎる人が、
おおすぎる。
 
夕暮れがせまり、
男は、
大阪に、
帰らなければならない。
 
通りがかって、
たまたま、みていた、
ぼくの目の前に、
どかんと、
100冊の本を置いて、
処分を、
哀願した。
 
手数料として、
おしんこ、味噌汁つきで、
エビ天丼弁当を、
つけてくれた。
 
ぼくは、ひきうけた。
 
その本を、
3日かかって、
ぼくは、
読んだ。
 
そして、
99冊を、
いろんな人に、
必死でくばった。
 
ひとつの人生と、
ひとつの叫びが、
つづられていた。
 
本を、
たくして、
立ち去る、
初老の男の背中の、
残像が、
目に、焼き付いて、
はなれない。
 
ぼくも、
いつか、
男のように、
1冊の本を書き、
きっと、
路上に、
ならべるだろう。