まっしろな雪原に 
かぜがふきあれている 
ぼくは もう これ以上 
前にも後にも すすめない 
窪地をみつけて 
そこで よこになった 
 
体が すこし あたたかくなった 
きゅうに ねむけが やってきた 
 
とても 心地いい 
こもりうたが きこえてくる 
 
雪のなかを あるくときは 
できるだけ 赤い衣服を 
みにつけたほうがいい 
だれかに いわれた 
その言葉が よみがえってきた 
 
もし どこかで 
たおれていても 
はやく 発見して 
もらうことができるからだ 
 
こもりうたは つづく 
だれが うたっているのだろう 
そして やさしく ほほを なでる 
やわらかな手のひら 
なんて気持ちがいいんだ 
 
ぼくは このまま 
ここで 眠ることにした 
 
もう どうなっても 
かまわないという 
気持ちが こころに 
ひろがってゆく 
 
なんだか 
意識が うすれてゆく 
 
ただ ひとつだけ 
気になることがある 
それは 
ぼくが 赤い衣服を 
なにひとつ 
身につけて 
いないことだ