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                                                 写真・くいまる 
小林さんは 
ねころびながら 
苦悶した 
 
どうしても 
句がでてこない 
 
スポンサーの
秋元さんに 
わるいな 
 
小林さんは 
秋元さんに 
一句おくることを 
約束していた 
 
このところ 
スランプなのだ 
 
まったくというほど 
詩情が 
わいてこない 
 
小林さんは 
十五才で 
家を出て 
十年間 
さまよった 
 
どこでどうしたのか 
「みりん」製造販売で 
儲けた秋元さんと
知り合って 
運勢はよくなった 
 
秋元さんが 
小林さんに
庵をたててあげた   
 
小林さんは 
寝返りを 
くりかえした 
 
「でないでない」
一句出てこない 
あせった 
 
その夜 
秋の大雨が 
おそってきた 
 
それは 
ひどい雨だった 
 
やがて 
雨が上がり 
月が 
かがやいた 
 
小林さんは 
すくわれた 
 
一句 
うかんだのだ 
 
「名月や流れ残りのきりぎりす」(小林一茶)
 
 
 
 
       解説・・・・江戸時代の「みりん」は、甘口の飲み物出で、酒の飲めない人や
             女性に大変人気があったという。
             その「みりん」を江戸時代後半「万上(まんじょう)みりん」「天晴(あ
             ぱれ)みりん」のブランドで大儲けした一族があり、とくに天晴みりん
             を作った、五代目秋元三左衛門は、金儲けのアイデアも実力もある
             風流人であったらしい。
             小林一茶は、15才の時信濃の柏原を後に江戸へ出て約十年は、何
             をしていたか誰もわからない生活していたらしい。
             その後、どこでどう知り合ったのかはわからないが、秋元さんの世話に
             なったらしい。庵もつくってもらった。
             天晴みりんは、現在、メルシャンワイン株式会社に経営が移った。
             
             この句は、
             秋の大洪水が去った月のきれいな夜、
             生き残ったきりぎりすの声がきこえるという
             なんと感動的な句なんだろう。