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ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
意識がとおざかる
 
蝶は
空をとび
花のかおりが
風にのって
やってくる
 
ぼくは
少年に
帰ってゆく
 
最終電車は
いってしまった
 
次の
電車には
のれません
 
ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
意識がとおざかる
 
波が
岸壁に
ぶちあったって
白い水しぶきが
とびっちった
 
ぎらぎらした
太陽が
体をつつむ
 
むこうから
きみが
素足で
はしってくる
 
ぼくは
おもいきり
きみを
だきしめる
 
最終電車は
いってしまった
 
もう次の
電車には
のれません
 
ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
意識がとおざかる
 
きみも
まぶしかった
ぼくも
はちきれていた
 
くったくのない
笑い声は
空にこだまする
 
とっても
いい気持ち
 
もう
どうでもいい
 
ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
あの日に
舟をこぐ
 
最終電車は
いってしまった
 
もう次の
電車には
のれません
 
ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
舟をこぐ
舟をこぐ
 
うすれてゆく
意識のなかで
 
ぼくはもう
ぼくじゃない
 
ゆっくりゆっくり
舟をこぐ
 
舟をこぐ
舟をこぐ
 
 
                            (写真・くいまる)