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穂坂先生が 小学校のちかくの
小高い丘に クラスのみんなを
つれてきた
 
春のひざしの あたたかい
とても気持ちの いい日だった
 
丘には小さな木が たっていた
根もとには すみれの花が
さいていた
 
穂坂先生は この丘を
今日から
すみれが丘とよぶことにしよう
といった
 
名前のなかった丘が
すみれが丘に かわった
 
ぼくは小学校の
三年生だった
 
ぼくは そのとき
言葉の不思議な力をかんじた
 
雑草が はえているだけの
なにもない空間が
言葉の力で
すみれが丘に かわった
 
こころのなかに なにかが
うまれた
 
あれから ずいぶん
時間がたった
 
ぼくは いつも
あの日の
すみれが丘に 
たって
 
なにかが かわり
なにかを うむために 
言葉を さがしている
 
そして ときどき
穂坂先生を
おもいだす
 
 
 
 
 
 
 
                (写真・くいまる)