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ぼくは
セールスマンを
していたんだ

セールスマンは
たいがいきらわれる

ところが
ある家にいったら
とても歓迎された

おばあちゃんの
一人暮らし
さびしかったんだな

だれでも
いいから
はなしたかったんだ

おばちゃんは
おじいさんが
なくなって
とてもよろこんだ

これで
自由になれる
これで
すきなように
いきられるって

おばあちゃんの
時代には
恋愛とか
すきとか
そうしたことばは
なかった

せいぜい
ほれた
くらいの
ことばしか
なかった

だから
なのか
みょうに
さばさばしている

おばあちゃんは
おじいちゃんが
なくなって
おじちゃんのものを
全部すてた

すっきり
したかったんだ

ところが
おじちゃんの
趣味は
石を
あつめること
それも
おおきな石を
あつめること

おばあちゃんの
家の庭には
おじちゃんが
あつめた
おおきな石が
ごろごろしていた

おばちゃんは
引越すことも
石を処分することも
できなかった

あまりに費用が
かかりすぎるから

おばちゃんは
まるでいまでも
おじいちゃんに
しばられている
気持ちから
どうしても
ぬけだせない

おばちゃんは
何杯ものお茶を
ぼくにすすめて
このこまった石の
はなしを
つづけた

おかげでぼくは
ながい時間
ただ
うなづくだけだった

それにしても
庭には
みごとな
おおきな石が
ごろごろしているもんだ

この石は
やがてどうなるのだろう

おばあちゃんが
なくなっても
この家がくちても
このごろごろした石は
だれにも
処分できないだろう

おじいちゃんが
どこかで
してやったりと
わらって
いるみたいだ

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(写真・くいまる)