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たまたま
古本屋で
みつけた
一冊の文庫本を
よみ終えた

最終ページを
みると
昭和38年8月26日求ム
佐久間節子と
万年筆で
記されている

55年前の今日
節子さんが
どこかの書店で
この本を
購入したのだ

もちろん
節子さんとは
面識がなく

まわりまわって
ぼくの手元に
この本が
たどりついた

節子さんは

生きているのか
もう
なくなって
しまったのかも
わからない

55年前の
今日は
どんな
天気だったのだろう

55年前の
日本は
どんな
国だったの
だろう

節子さんは
どんな
気持ちで
この本に
手をのばしたんだろ

ぼくは
そんなことを
かんがえた

1冊の本が
時空を
越えて
はなしかけてくる

節子さんは
この本を
よんだのかな
それとも
求めても
よまなかったのかな

55年間は
ながい時間だろうか
みじかい時間だろうか

節子さん
節子さん
はなしかけて
みたくなる

いまから
55年たったら
ぼくは
まだ
この世に
いるかな

55年前の8月26日に
節子さんが
購入した本を
55年後の8月26日に
ぼくもよんだ











(写真・くいまる)