人里はなれた、山道を、随分あるいた、
もうすぐ、たどりつく底なし沼。
ぼくの好奇心は、ぼくに、ちからを、あたえてくれた。
空は、青くすみ、白いくもが、ぽっかり浮かび、
とおくで、鳥が鳴く。
恐怖心と好奇心、ふたつのこころがせめぎあう。
それでも、底なし沼に、いってみたい。
それは、こどもから、こどもじゃないものに、
かわってゆくころのはなし。
町屋駅から庚申塚まで、都電にのる。
ばあちゃん同士が、はなしをしてる。
ちかごろみかけなくなった、じいさんのはなし。
じいさんは、なくなったらしい。
冬の夕暮れは、はやい。
ビルに、反射した夕陽が、とてもまぶしい。
なぜだか、こんなところで、きゅうに、
ぼくのあたまのなかに、よみがえる、
底なし沼。
コメント