町長は、せきばらいをした。
そして、おもむろに、口を、ひらいた。
とうとうわが町にも、機械がやってきた。
まちにまった、夢が、実現した。
 
町民は、拍手喝采で、機械を、むかえた。
ばんざいを、さけぶひともいた。
町中に、おかしと祝のしるしの記念品が、くばられた。
 
これで、やっとくるしい労働からも、解放される。
ながい時間をかけて、技術を、習得しなくてもすむ。
 
機械を開発した科学者は、表彰された。
機械を売り込んだ商人は、金持ちになった。
評論家は、これが、機械革命だと論じた。
歌手は、いとしの機械を歌った。
どの新聞も、テレビも、機械を賞賛した。
政治家は、自分の手柄を自慢した。
先見性のある母親は、機械好きな子供になることを、
子供に、おしつけた。
 
もう、ひとの筋肉は、あまり必要としなくなった。
スポーツ観戦用の筋肉があれば、よくなった。
 
ただ、悩みは、ふえた。
悩むための時間がおおくなって、
悩むために、悩むように、なった。