じいさんは 背中を 
ぼくにむけて 
ぜんまいを 
まいてくれという 
 
電池式でも 
電気式でも 
ない 
じいさんの 
エネルギーは 
どうやら 
ぜんまい式 
らしい 
 
じいさんは 
すこし 
まえかがみに 
なった 
 
ぼくは 
じいさんの 
背中の 
ぜんまいを 
二回半 
まわした 
 
あまりまわすと 
こわれそう 
だった 
 
じいさんは 
ありがとうと 
礼をのべると 
また 
ゆっくり 
あるきだした 
 
春の夕暮れの 
おだやかさは 
じいさんの 
あるきかたに 
とてもよく 
にあっていた 
 
最新型 
ソーラーパネル  
電池式みたいな  
子供たちが 
元気よく 
自転車で 
じいさんを 
おいぬいていった 
 
ところで 
ぼくの 
エネルギーは 
なんだろうと  
自分で自分のことを 
かんがえた  
 
きにもとめずに 
のんべん 
だらりと 
生きてきた
 
自分は 
自分で自分のことが 
よくわかっていない 
 
ぼくの指先には 
さっき 
じいさんの 
ために 
まわした 
ぜんまいの 
感触が 
のこっている